Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

6月の記事「舞台と映像作品をくらべて(2):1989年のインタビューより」の引用部分で、ジェレミーがこんなふうに言っていました。

翌日ラッシュ(訳注:編集前のフィルム)をみにいく。うまくいったかな?成功かな?

Next day we go to the rushes. Did it work, did it work?

"Partners in Crime: Jeremy Brett and Edward Hardwicke"
Pam Clarke and Yvonne Parkin
Stage Struck, Issue 1, 1990

これからの連想で、ラッシュをみることについて、思い出したことを二つ書きましょう。

まずはDavid Stuart Davies著、Bending the Willowから、Paul Annettの言葉です。彼はグラナダ・シリーズで最初に撮影されたThe Solitary Cyclist (「美しき自転車乗り」)をはじめとして、3作品を監督しています。彼の言葉です。

ジェレミーはラッシュのすべてを熱心にみた。ラッシュをみるときにいつもそこにいた俳優はジェレミー以外にはCharles Danceしか知らない。いつもその場にいて熱心に検討に加わった。撮影の技術的な側面に対して彼は鋭い感覚を持っていた。

Jeremy was extremely keen to see all the rushes. He was probably the only actor I know, other than Charles Dance, I think, who came to every session of the rushes. He was there every time—very much into what was going on. He had a very keen sense of the technical side of things.


Charles Dance(チャールズ・ダンス)は1946年生まれの俳優で、2004年には自分で脚本を書いて映画監督もしているようです。Paul Annettの経験では、ラッシュをすべてみたのは、その彼と、ジェレミーだけだったのですね。ジェレミーも長生きしていたら映画やテレビの監督をする機会もめぐってきたかもしれません。主に演じることだけに興味がある俳優もいるでしょうし、こうして作品全体が生まれる過程にも立ち会いたい俳優もいて、ジェレミーは後者だったのでしょう。

ところで、ラッシュをみることについて、Edward Hardwicke(エドワード・ハードウィック)がエドワードらしいことを言っていて、ジェレミーがまたジェレミーらしいことを言っているインタビューがあります。それが思い出した二つ目です。エドワードはラッシュはみたくないというタイプの俳優で、でもその理由は、「主に演じることだけに興味がある」というわけではないようなのです。

"Holmes' Encore"
The Armchair Detective, Vol.25, No.1, 1992

1992年の発行ですが、1991年の春に行われたインタビューです。この直前ではエドワードが、意図した演技ができなかった例をたずねられて、自分の写真をみせられて、なんてひどい!と思うように、演技においてもこんなはずじゃなかったのにということがよくある、でも「思ったほど悪くはない、期待とはちがったけど、これはこれでいい」と思える、と言います。これを受けた形で次の質問です。TADがインタビューアです。

TAD: 完成前の映像で自分をみるのは、お二人はイヤですか?

ブレット: 自分をみるんじゃないんですよ。みるのはそれ以外です。たとえば話がどう運ばれているかをね。画家が絵を細かく検討するときのように、親指で自分をかくして、まわりで何がおきているかをみるんです。

ハードウィック: 以前はよくジェレミーと議論したんですけど、ワトスンを演じるようになってすぐの頃、ジェレミーがラッシュをみるのにすごく熱心なので、こう言ったんです。「僕はみていられない。すごくイヤなんだ。」完成してからみるのはいいんですよ。でもいま撮影しているという時にラッシュで自分をみると、がっかりしてダメなんです。ジェレミーは「うん、でも自分をみているだけじゃないよね。他の人、照明や音響や、みんなの仕事をみている。みんなほめられて励まされたいんだ。ラッシュで彼らの仕事をみて、翌日『すばらしかったよ!』って言ってあげられるよ。」ジェレミーの言うとおりです。でも自分が思っているようには演じることができていないから、やはりみるとがっかりします。

TAD: Does it bother either of you to watch yourself in previews?

Brett: Well, you don't look at yourself. You look at other things. The storytelling, for instance. You put a thumb over yourself, like a painter examining his work, and watch what goes on around you.

Hardwicke: I used to get into an argument with Jeremy about this. When I took over the part of Watson, he was very keen about going to rushes. I said, "I can't. I just cannot face it. I really hate it." I don't mind seeing a completed film. But when I'm in the process of working, I find it personally very destructive to see rushes. Jeremy would say, "Yeah, but you're not just looking at you. All the other people—the lighting man, the sound man—they all want a pat on the back. And if you watch it, you can go up the next day and say, "Terrific!" And he's quite right. But you never end up doing what you think you're doing, and I find it discouraging.


"You put a thumb over yourself, like a painter examining his work"とジェレミーが言っているところ、「画家が絵を細かく検討するときのように、親指で自分をかくす」と訳しましたが、絵を描く方、これであっているでしょうか。手のひらや指で絵のある部分をかくして、その部分に惑わされないようにして、それ以外をみるようなことを画家がやっているのをみたことがあるような気がしてこう訳しました。直訳すると「親指を自分の上に(覆うように)置く」、でしょうけど。訳自体には100%の自信はないのですが、ここで面白いと思ったのは、絵を描く時のことを例えにあげていることです。ジェレミーのお兄様の一人は画家ですものね。

ジェレミーはラッシュをみるのに熱心な理由の一つ目として、作品の出来具合を俯瞰してながめたり、自分以外の動きを確かめたりしたかったのですね。

それに対してエドワードは、ラッシュをみると自分にがっかりするタイプなのですね。でもその前の部分で言っているように、「思ったほど悪くはない、期待とはちがったけど、これはこれでいい」とも思えるのです。繊細だけど冷静で理性的という感じがします。

そしてエドワードがジェレミーの言葉を紹介してくれています。ここもまたスタッフを大切にするジェレミーらしいです。これが、ジェレミーがラッシュを熱心にみる、二つ目の理由なのですね。ジェレミーと撮影クルーとの関係について6月の記事「舞台と映像作品をくらべて(2):1989年のインタビューより」でも触れました。

ラッシュをみることについて、思い出した部分を二つ引用しました。

RM
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