Jeremy のことが知りたくて ~ ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)を愛するかたへ

英グラナダ・テレビでシャーロック・ホームズを演じた俳優の人生を言祝いで

BBC Genome Projectは、イギリスのテレビ・ラジオ情報誌Radio Timesに掲載されたBBCの番組予定表を元にアーカイブを作成する、BBCのプロジェクトです。
http://www.bbc.com/news/technology-29643662

そのtwitterで、5月12日のtweetとして、An Ideal Husband (1969) からの写真が載っていました。Mabel Chilternを演じたSusan Hampshireのお誕生日だったそうです。後ろにいるジェレミーではなくSusan Hampshireの方にカメラの焦点があっていますが、でもこの作品は大好きな作品、Susan Hampshireもとても魅力的だったので、うれしい写真でした。
https://twitter.com/bbcgenome/status/862978158722723842

これはスクリーンショットではなく、宣伝用写真ですね。ビデオテープの時代、そのケースにトリミングされて使われていました。
https://www.amazon.co.jp/dp/B000062XO0
でも大きな写真は私ははじめてです。

面白いのは、この作品をご覧になったかたは気づかれるかもしれませんが、二人の服は最初のパーティのときの写真、でも少しだけ写っている黄色いバラは後半のChiltern家のシーンでのバラに見えることです。

なお似た構図の白黒写真が1969年5月のRadio Timesに載っていましたが、今回の写真ではありませんでした。白黒ですから黄色いかどうかはわかりませんが、その写真にもバラがうつっていました。

下にアドレスを書いたページには今回の写真と同じ、パーティでの二人の写真があります。これもスクリーンショットではなく、2014年にBFI Southbankで上映されるときのお知らせで使われた写真です。それ以前には私は見たことがありませんでした。
https://screenplaystv.wordpress.com/2014/04/28/the-edwardians-play-of-the-month-an-ideal-husband-bbc1-1969/

私はtwitterをしていませんし、BFI Southbankのページもジェレミーがらみで数回しか見たことがありません。それでもこういう辺境(?)にある新しい写真や珍しい写真をみつけるためにどんなことをしているか、書いてみますね。みなさんもうよくご存知のことかもしれませんが。

時々Google Imagesで画像検索するときに、たとえばこの一ヶ月以内の写真、といったフィルターをかけると、この一ヶ月の間に更新されたページに載っている写真がひっかかってきます。そうすると時々私にははじめての写真がでてくるのです。"Jeremy Brett"だけで普通に検索すると有名な写真ばかりがヒットするので、こうしています。Googleでジェレミー関連のニュースや動画を検索するときも同様です。

宣伝のためにたくさん撮られた写真のうちで、当時使われたとしても今ではほぼ忘れられた写真、あるいは実際には使われなかった写真というのはずいぶんあるのでしょう。少しずつそういうものが出てきて、時々検索にひっかかってくるとうれしいと思っています。


An Ideal HusbandはDVDになっています。とってもおすすめです。喜劇ですよ!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0019BI1FA
このDVDには他に、ジェレミーがBasil Hallwardを演じたThe Picture of Dorian Gray (1976) も入っています。

RM
自分にとっての映像上のホームズはBasil Rathbone(バジル・ラスボーン)だということ、いろいろなインタビューでジェレミーは話していますね。たとえばこのブログではこちらで触れました。
Rathboneへの敬意

それではどのワトスンがもっとも好きなのでしょう。もちろんグラナダ・シリーズ以前ということです。そのことを話しているインタビューは、私はこれしか思い出せません。
Baker Street Regular: Jeremy Brett and Edward Hardwicke
Interviews by Jim Knüsch
Scarlet Street, No.5, 1992

ジェレミーが、どのホームズとワトスンが好きか質問されている部分で、SSはインタビューア、JBはジェレミーです。

SS: あなた方より前の作品で、特に素晴らしいと思うホームズかワトスンはいますか。
JB: 一番好きなのはJames Mason(ジェームズ・メイソン)だと思います。私が一番好きなワトスンです。一番好きなホームズはこれからもずっとRathbone(ラスボーン)でしょう。ラスボーンは、Paget(パジェット)の挿絵がそのまま動いているようにみえます。William Gillette(ウィリアム・ジレット)はもちろん見たことがないのです(笑い)。

SS: Are there any predecessors in either role that you particularly admire?
JB: I suppose my favorite one is James Mason; that's my favorite Watson. I guess my favorite Holmes will be Rathbone forever. He seems to me to be the Paget drawings on the move—not having seen William Gillette, of course (laughs).


James Mason(ジェームズ・メイソン)が一番好きだと言っています。彼がワトスンを演じたのは、Murder by Decree (1979) で、ホームズはChristopher Plummer(クリストファー・プラマー)でした。ちなみにクリストファー・プラマーは、「ジェレミーにBAFTA賞を!」の活動を支持するメッセージを書いています。
https://web.archive.org/web/20120229202932/http://www.bafta4jb.com/2011/10/a-letter-of-support-from-christopher-plummer-cc/

演じるという私たちの職業にジェレミーがどれだけの貢献をしたかを見落としてしまって、しかるべき賞を与えないというのは、ひどく残念なことだと思います。たとえば彼はシャーロック・ホームズで世界的な名声を得ましたが、いままで私が観たうちで最高のホームズでした。もっとも完全に近く、もっとも人並みはずれていて、断然、一番本物のホームズでした。

It seems a crying shame to ignore Jeremy and his outstanding contributions to our profession. His Sherlock Holmes for example, which made him an international star, is the best interpretation of the role I have ever seen - the most complete, the most eccentric, the truest by far.


自分もホームズを演じたクリストファー・プラマーが、これほどジェレミーを讃えてくださったことにこころ打たれます。

さて、ジェレミーが過去の作品の中で一番好きなワトスンであるJames Mason(ジェームズ・メイソン)は、1984年になくなったのですね。ジェレミーのホームズはまったく、あるいはほとんど観ていないでしょう。とても残念です。

クリストファー・プラマーとジェームズ・メイソンの二人が出演した作品の邦題は「名探偵ホームズ 黒馬車の影」だそうで、DVDも出ています。「シャーロック・ホームズと切り裂きジャックの対決を描いたミステリー」と書かれています。
https://www.amazon.co.jp/dp/B008RVBX6O

ジェレミーはどういうところが好きだったのでしょう。The New York Timesの映画評を斜め読みしてみました。Mr. Mason's Watson is a splendidly staunch and reliable friend(ジェームズ・メイソンのワトスンは誠実で頼りになる友人だ)と書かれています。
http://www.nytimes.com/movie/review?res=9A00EEDF1331E432A2575AC0A9649C946890D6CF

この、ホームズの良き友としてのワトスンを、グラナダシリーズより前に演じたからこそ、ジェレミーに、自分たちより以前の作品で「私が一番好きなワトスン」と言わせたのかもしれませんね。機会があったら観てみましょう。


ところでジェレミーが「William Gillette(ウィリアム・ジレット)はもちろん見たことがないのです」と言って笑っているのは、ウィリアム・ジレットがホームズを演じたサイレント映画は1916年のもので、しかも映画は失われていたからです。

ところが2014年にフランスでこの映画のフィルムがみつかったという話はご存知のかたもいらっしゃるでしょう。
https://en.wikipedia.org/wiki/Sherlock_Holmes_(1916_film)


なお以前に下の記事に書きましたが、このインタビューは今では全文をネット上で読めます。
「青い紅玉」が大変だった理由:1992年のインタビューより

このインタビューの他の部分にも興味があるかたはどうぞ。少し誤植等がありますので、私は元の雑誌から引用していますが。

RM
前回に引き続き、もう一回だけこの音源について書きたくなりました。

二ヶ所引用して、その部分の英語と日本語を書いてみましょう。一つ目はジェレミー演じるOrlandoが、Rosalindへの恋の詩を森の木に貼り付けながら語る独白、二つ目はちょうど前々回ご紹介した写真のシーンにちがいないと私が思う箇所です。引用元の音源は、前回ご紹介した、こちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=RI-SydR5YA0
https://www.youtube.com/watch?v=IEpxtPdiUmk

まず一つ目。43秒の音声で、途中でジェレミーの声が大きくなりますので、イヤホンの方は注意なさってくださいね。








環境によっては上に設置したプレイヤーが見えないかもしれません。その場合はこちらをどうぞ。別ウィンドウで開くはずです。(でも携帯電話でどうなるかは私にはわかりません。ごめんなさい。)
As You Like It clip 1 (ACT 3 SCENE 2)

情熱的ですね!"Run, run, Orlando" 「走れ、走れ、オーランド」なんて自分に言っています。でも、ところどころわかるけれども、あまりわかりません。

そこで英語で読んでみます。第三幕 第二場からで、テキストは下のアドレスのページからいただきました。元のサイトでは、下線部がひいてある単語をポインタで触れると、単語の意味も教えてくれます。
http://internetshakespeare.uvic.ca/doc/AYL_M/complete/

下では音源でのセリフがシェークスピアの元のテキストと少し変わっているところがあっても、そのままにしています。

ACT 3
SCENE 2. The forest.

ORLANDO
Hang there, my verse, in witness of my love;
And thou, thrice-crowned Queen of Night, survey
With thy chaste eye, from thy pale sphere above,
Thy huntress' name that my full life doth sway.
O Rosalind! These trees shall be my books,
And in their barks my thoughts I'll character,
That every eye which in this forest looks
Shall see thy virtue witnessed everywhere.
Run, run, Orlando, carve on every tree
The fair, the chaste and unexpressive she.


でも日本語訳が欲しくなります。そこでここは著作権が消滅している坪内逍遥訳「お氣に召すまゝ」でいきましょう。これがまた時代がかっていて面白いのです。旧仮名遣いです。こちらのサイトからいただきました。
http://books.salterrae.net/osawa/html/asyoulikeit.html

オーラ
おれの作った歌よ、そこに掛かってゐて、おれの切なる戀の證據人になってくれ。(と天を仰いで) それから、夜の女王と崇めるお月さん、あなたは、其清淨な目で以て、其天上の蒼い圓座から、 わたしの一生を支配しさうなあの女獵師の名を讀みおろしてゐて下さい。……おゝ、ロザリンド! ……此邊の木どもをば、おれの手帖代りにして、其幹へおれの思ふことを刻み附けておかう。 此森の中にゐる限りの者の目が、至る處で、お前の淑徳が讚美してあり證明してあるのを見るやうにするために。 さ、走れ~、オーランドー。一本々々の木毎に、あの美しい、淨らかな、迚(とて)も言葉に言ひあらはせないあの人の名を刻みつけろ。


うわあ、面白いけど読みにくい旧漢字もあります。戀(恋)、證據人(証拠人)、圓座(円座)、獵師(猟師)、此邊の(此の辺の)、ですね。

なんだか、日本のシェークスピア受容史に触れているような気がします。


さて、二つ目は前々回ご紹介した写真のシーン、つまりRonald Pickup演じるRosalindと、ジェレミー演じるOrlandoが手をとりあっていて、Charles Kay演じるCeliaがその間にいる、というシーンの音声だと私が思う箇所です。

Orlandoは男装しているRosalindに促されて、本人を前にしているとは知らぬまま、恋するRosalindへの告白の練習をおこないます。二人は結婚式の真似事をすることになり、Rosalindは従姉妹のCeliaを呼びます。

三人ともとても真面目な顔をしているのは、これが結婚式の誓いの場面だからでしょう。

この場面の音声はこちらです。こちらも途中で声が大きくなりますからご注意ください。1分37秒です。








あるいはこちらでどうぞ。
As You Like It clip 2 (ACT 4 SCENE 1)

ACT 4
SCENE 1. The forest.

ORLANDO
I would not have my right Rosalind of this mind, for, I protest, her frown might kill me.
ROSALIND
By this hand, it will not kill a fly. But come, now I will be your Rosalind in a more coming-on disposition; and ask me what you will, I will grant it.
ORLANDO
Then love me, Rosalind.
ROSALIND
Yes, faith, will I, Fridays and Saturdays and all.
ORLANDO
And wilt thou have me?
ROSALIND
Ay, and twenty such.
ORLANDO
What sayest thou?
ROSALIND
Are you not good?
ORLANDO
I hope so.
ROSALIND
Why then, can one desire too much of a good thing? -- Come, sister, you shall be the priest and marry us. -- Give me your hand, Orlando. -- What do you say, sister?
ORLANDO
Pray thee, marry us.
CELIA
I cannot say the words.
ROSALIND
You must begin, 'Will you, Orlando --'
CELIA
Go to. -- Will you, Orlando, have to wife this Rosalind?
ORLANDO
I will.
ROSALIND
Ay, but when?
ORLANDO
Why, now; as fast as she can marry us.
ROSALIND
Then you must say, 'I take thee, Rosalind, for wife.'
ORLANDO
I take thee, Rosalind, for wife.


そして「お氣に召すまゝ」坪内逍遥訳、第四幕 第一場の途中からです。
http://books.salterrae.net/osawa/html/asyoulikeit.html

オーラ
眞(ほんと)のロザリンドさんには、そんな料簡でゐて貰ひたくない、なぜなら、 あの人が憎さうに睨んだりなんかすりゃ、わたしは殺されッちまふから。
ロザ
何の、睨んだぐらゐで蠅一疋だって死ぬものか!だが、これから氣を變へて、 どうやら靡(なび)きさうなロザリンドさんになるからね、 何なりと要求して御覽、諾(うん)といふから。
オーラ
ぢゃ、ロザリンドさん、わたしを愛して下さい。
ロザ
はい~、年が年中でも。
オーラ
で、良人(をつと)にして下さるか?
ロザ
はい、二十人分でも。
オーラ
え、何ですって?
ロザ
あなたは善良でせう?
オーラ
その積りです。
ロザ
ぢゃ、善良な代物は餘計に仕入れて損はしないでせう?さ、妹、お前さん牧師の役をして、 わたしたちを結婚さしとくれ。オーランドーさん、手を。……え、妹、どう?
オーラ
(シーリヤに)式を行って下さい。
シーリ
わたし文句を知らないわ。
ロザ
まづ、初めに、「オーランドーよ、卿(おんみ)は……」
シーリ
分ってよ。……オーランドーよ、卿(おんみ)はこれなるロザリンドを妻とせん心なりや?
オーラ
はい、さやうです。
ロザ
だが、いつ?
オーラ
今です。式が濟み次第に。
ロザ
ぢゃ、あんあてゃ斯ういふのよ、「ロザリンドよ、われは卿(おんみ)を妻としてめとったり」と。
オーラ
ロザリンドよ、われは卿(おんみ)を妻としてめとったりッ。


シーリアの「わたし文句を知らないわ」で観客は大笑いしています。ここのシーリアの調子に、親しいロザリンドがオーランドに夢中なのを、ちょっとからかう気持ちを感じます。

そしてオーランドの「われは卿(おんみ)を妻としてめとったりッ。」なんて、面白いですね。ジェレミーはここを長い沈黙の後で、静かな、こころのこもった声で言っています。あんまり長いので、上の音声クリップでは沈黙を少し削りましたが、観客は長い沈黙の間、ジェレミーをみつめていたでしょうね。前々回の写真は、私はこの沈黙の時ではないかと想像しています。目を伏せているジェレミーを、ロザリンドとシーリアの二人がみつめています。その後観客席から少し笑いがおこります。ジェレミーのオーランドがあまりに逡巡しているためでしょうか。

シーリア役は、この公演でもたしかにCharles Kayが演じているように思います。彼の声は聞き分けられます(少なくともそのつもりです。)Ronald Pickupの声は確信までは持てないのですが、おそらく彼だと思います。

今回これを書くために、同じところを何回も聴き直して、ジェレミーだけではなくRonald PickupもCharles Kayも見事な演技、見事な台詞回しだと思いました。観客もとても喜んでいますね。これからもっと調べてもっと聴いて、もっと楽しみたいと思います。

RM
前回、"As You Like It" の写真を1枚ご紹介したので、そこからの続きでもう少し書きましょう。

舞台"As You Like It" の音声がThe British Libraryにあることを、以前カタログを検索した時に知りました。1967年、The National Theatreの本拠地だったThe Old Vic Theatreでの録音です。
http://explore.bl.uk/primo_library/libweb/action/search.do?dscnt=0&frbg=&scp.scps=scope%3A%28BLCONTENT%29&tab=local_tab&dstmp=1493445524884&srt=rank&ct=search&mode=Basic&vl(488279563UI0)=any&dum=true&tb=t&indx=1&vl(freeText0)=%22As%20You%20Like%20It%22%20%22national%20theatre%22%20jeremy%20brett&vid=BLVU1&fn=search

これはおそらく資料として録音されたもので、市販されることは望めないだろう、The British Libraryに行かない限り、聴く機会はないだろうと思っていました。

ところがYouTubeでこんな音源をみつけてびっくりしました。
https://www.youtube.com/watch?v=RI-SydR5YA0
https://www.youtube.com/watch?v=IEpxtPdiUmk

アップロードした人は説明欄に、1968年10月1日、ロンドンのThe National Theatreが行った"As you like it" の公演の音声、と書いています。デンマーク、コペンハーゲンのFalkoner Centret(コンサートホールの名前)でのライブ録音を、オリジナルのテープから移したものだと記した後で、この人も詳細はよくわかっていないようで、"Please add any additional information in the comments field."(情報を持っている人はコメント欄に書いてください)と記しています。

The National Theatreの"As you like it"は以下の俳優が演じているとして、説明欄に1967年のイギリスでの公演時のキャストをWikipediaを参考に書き並べています。ここにジェレミーの名前があったために、検索でひっかかりました。

この音源の説明を読んで、とても驚いた理由が二つあります。あの演目が好評だったのは知っていたけれども海外公演までおこなったとは知らなかったこと、そしてその音声が残っていて、どうもそれが客席から個人がこっそり録音したのはなく、劇場側が録音したようにとれること。(このYouTubeチャンネルに、この劇場でのいろいろな公演の音声があがっています。)

ただ、このチャンネルの持ち主もこの公演の詳細を知らないようなので、実際には1967年のイギリスでの公演のキャストが皆そのまま、1968年10月にデンマークへ行ったのではなかったかもしれないし、そもそもこれがThe National Theatreの"As you like it" の公演だということ自体が勘違いかもしれないと思いました。Jeremy Brett Informationのページにも、これが海外に行ったという記述はありません。(公演は1967年10月3日から1969年2月17日と書かれています。)
http://web.archive.org/web/20160609143555/http://www.jeremybrett.info:80/st_asyoulikeit.html

どきどきしながら、でも疑いながら音声を再生したとたん、ジェレミーの声が聞こえました。間違いありません!幕があいての第一声がジェレミー演じるOrlando、録音では38秒からです。
https://youtu.be/RI-SydR5YA0?t=38s

いつもながら、音楽的な声と調子だと思います。今までも、たとえばジェレミーで聴き慣れているセリフを別の人が演じていると、ジェレミーの声が持つ表情の豊かさにあらためて気がつきます。

この公演の音声を聴くことができるとは思ってもいませんでした。ただ悲しいことには、シェークスピアの英語は私にはまだ歯がたちません。オーディオブックが大好きな私は、ジェレミーのオーディオブックをこのブログでいくつかご紹介しましたが、耳から聴いてある程度筋が追えるのは、いずれもシェークスピア以外の作品でした。ただしシェークスピアでも"Troilus and Cressida"は、あらかじめ筋を知って、ジェレミーのセリフを文字で読んだ後だったので、耳だけでも楽しめました。この"As You Like It"もいずれそうやって聴きたいと思っています。

なお、この録音の著作権等がどうなっているのかわかりません。このブログでは現在市販されている作品、中古品を比較的容易に手にいれられる作品がアップロードされていても、アドレスを書かないという方針にしています。それ以外はその時々で判断していますが、この録音は市販されていないこと、歴史的音源であることから、アドレスを記載しました。

ジェレミーの声が好きな方、舞台芸術が好きな方、耳から聴いて情景を想像するオーディオブックが好きな方、シェークスピアが好きな方、そして私のように、まだ無理だけどいつかこの作品をきちんと聴いて楽しみたいと思っている方を想像しながら、そのような方に向けてご紹介しました。そういう同士がいらっしゃると嬉しいのですけれども、どうでしょうか。

RM
Google Arts & Culture というサイトがあります。
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/

「Google Cultural Institute と連携している 1,200 以上の代表的な施設やアーカイブのコンテンツをご覧いただけます」とあります。そのパートナーの一つに、イギリスの The National Theatre があります。そのページです。
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/partner/national-theatre

ここに舞台 As You Like It (1967) の写真が1枚ありますので、ご紹介しましょう。コンピュータからだと写真を拡大できるのですが、携帯電話でどうみえるかは例によってわかりません。
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/asset/_/ywGuYdIgZlzWWw

写真の説明に "Ronald Pickup (Rosalind), left, with Charles Kay (Celia) and Jeremy Brett (Orlando) in As You Like It, 1967" とあります。一番左がRonald Pickup(「バスカヴィル家の犬」の執事Barrymore)、真ん中がCharles Kay(「這う男」のPresbury教授)、そしてジェレミー(もちろんホームズ!)です。三人とも若いですね!長い友情です。

すべての役を男性が演じています。この場面ではCharles Kayは女性の役、Ronald Pickupは男性のふりをしている女性の役です。

As You Like It (1967) に関する他の資料はここでみることができます。
"Shakespeare at the National Theatre"
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/exhibit/wRkj-Bl-

2年前くらいだったでしょうか、これをみつけたとき、これからどんどんThe National Theatreの所蔵する資料がネット上で公開されるのだろうとわくわくしましたが、残念ながら増えている印象はありません。少なくともジェレミーに関しては、この演目以外にはアップロードされていません。でもGoogle Arts & Culture自体はコレクションを充実させているようですから、希望を持って時々のぞいてみます。

ちなみにGoogle Arts & Cultureを"Jeremy Brett"で検索すると、もう一枚写真がヒットします。
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/asset/-/OAHVcuD_fnB7pw

でもこの写真は以前からあった LIFE Photo Archive に今もあって、こちらは大きなサイズの写真(この場合は1280 x 947 pixels)もダウンロードできるようになっています。
http://images.google.com/hosted/life/893caa1b8416be68.html

RM
前々回の記事に書いた本が届きましたので、この本について少しご紹介してみます。あらためて本のタイトル等と、出版社のページおよびアマゾンのページのアドレスを書きます。

Granada's Greatest Detective: A Guide to the Classic Sherlock Holmes Television Series
By Keith Frankel
Fantom Films Limited, 2016
http://www.fantomfilms.co.uk/books/keithfrankel_granadasgreatestdetective.htm
https://www.amazon.co.jp/dp/1781962677

私が見落としていなければ、著者の略歴などが書かれた欄はこの本にはありません。その中でヒントになると思われるのは、献辞のページに書かれた言葉です。

To all those at Holmesian Net
(especially those of Just Jeremy)
and to Mum and Dad


Holmesian Netの皆に
(特にJust Jeremyのスレッドのメンバーに)
そしてママとパパにこの本を捧げます。


Holmesian Netはシャーロッキアンが集まるウェブ上のフォーラムでした。Wayback Machineで調べると、最初にアーカイブされたのは2006年4月ですから、これより少し前に始まったのでしょう。
http://web.archive.org/web/20060408183631/http://www.holmesian.net:80/forums/

特定のホームズ関連団体の人ではなく、一般の人が書き込める、ホームズ関連のフォーラムの草分けでした。こういう場所がみつからなかったのでここを作った、と創始者が書いていたように記憶しています。上から3つ目にThe Granada Districtという、もっぱらグラナダシリーズについて語るセクションへの入り口がみえます。

こちらは、このサイトがハッキングされてなくなってしまう前、最後にアーカイブされたトップページで、2012年7月です。私が知っているのはこの外観の時です。
http://web.archive.org/web/20120717080222/http://www.holmesian.net:80/forums/

このThe Granada Districtのセクションの中に、誰でも自由にスレッドを始めることができました。そのようにしてできたスレッドのトピック名が並ぶ最初のページです。2012年9月にはこれが13ページもあったのです。
http://web.archive.org/web/20120905024146/http://www.holmesian.net:80/forums/index.php?showforum=10

これは登録しなくても閲覧できるページですが、登録者になるとここに"Just Jeremy"というスレッドへの入り口があらわれました。私はこのサイトがなくなる少し前までの短い期間、調べればわかるのですが1年半くらいだったでしょうか、この"Just Jeremy"のメンバーでした。お粗末な英語で書き込んだ私を皆があたたかく迎えてくれました。

"Just Jeremy"は、ジェレミーに関することを、ひたすら書き込むというスレッドでした。The Granada Districtには、ジェレミーに関するスレッドは他にもたくさん作られています。その中で"Just Jeremy"の特徴は、ジェレミーに関することならなんでもありという場所であったこと、その時々に常連の一人がはじめたある話題について、皆がしばらく継続的に意見を書いたり議論する場所でもあったというところだと思います。今の期間はグラナダシリーズのこのエピソードについて皆で話しましょうという時もありました。長い投稿も多くあり、文章を書くのが上手で好きなのだろうと思わせる人がたくさんいました。

今回この献辞を読んで、著者はこのスレッドの常連だったことがあるのだろうと推測しました。私がいた頃と重なっているでしょうか。



さて、本の中身にはいりましょう。私はこの本を買ってよかったです。そしてページをめくってみて、こういう方はこの本を楽しめるだろうと思いました。

1. David Stuart Davies著 Bending the Willow (or Dancing in the Moonlight),
Michael Cox著 A Study in Celluloid,
Peter Haining著 The Television Sherlock Holmes
のいずれか、あるいはいずれも持っていなくて、この3冊に書かれている、このシリーズの舞台裏、演者・監督・プロデューサーなどの言葉に興味がある。

2. 上記の本を持っているけれども、これら3冊の本の記述をまとめた形で、41の作品それぞれの撮影の舞台裏をあらためて読みたい。
また、出演者・監督・プロデューサーなどの言葉を、41の作品にわけて再構成したものを読みたい。(ただし特定のひとつの作品に関する発言ではなくても、どれかの作品のセクションに振り分けられています。)

3. 雑誌や新聞の記事、ラジオインタビュー、テレビインタビュー、ウェブにアップロードされた発言の引用を読みたい。(ただしそれほど多くはないです。)

4. 著者がグラナダ・シリーズの41のエピソードの場面や演技をどう描写するか、どう評価するかを読みたい。


私が読んで面白く感じた理由は2番と4番です。3番はざっとみた限りでは私が読んだ(聴いた、観た)ことのないインタビューはほとんどありませんでした。ですから私にとってはこれは新しい知識や情報を得る本ではなく、読んで楽しむ本でした。

前々回、「つぎはぎしてまとめたような本はあまり読みたくない」と書きましたが、この本の2番の部分は、ある意味ではつぎはぎです。でもこのつぎはぎが上手で丁寧なのです。(もちろん、引用箇所を除いてはコピー・ペーストではなく、自分の言葉で書き直してまとめています。)

撮影の舞台裏に関しては、それぞれの作品について、ああ、そうだった、とあらためて思い出したり、時系列にそって再確認ができました。出演者などの言葉については、必ずしもその作品に関してではなくても、著者がそれぞれの人の言葉にゆるやかなつながりを感じて並べたのだろうと想像出来るものもあって、これも面白いです。私が芋づる式連想で記事を連ねるのと似ていますね。

ひとつ批判を加えるとすれば、インタビューの言葉の引用はすべて出典を記しているのに対して、撮影の舞台裏に関しては、それぞれの記述がどの資料にもとづくかが書かれていません。その記述の出典を書かないことの弊害は、情報の元をたどることができなくなって、絶対的な真実のように一人歩きすること、そして最初の資料の書き手が尊重されなくなることだと思います。たとえばプロデューサーが資料(この場合は本)を残してくれたことはとてもありがたいことです。そしてそれはプロデューサーの目からみたものであり、もしかしたら他の人は違うようにみたかもしれないことも含まれていて、絶対的真実とは限らないのです。(この場合の絶対的真実は、「プロデューサーはA Study in Celluloidという本にこう書いた」ということです。)

最初にあげた3冊の本以外を参考にした部分も、少ないですがありそうなのですが、どの記事、あるいは誰からの情報なのか知りたいと思いました。インタビューの言葉の引用についてはすべて出典がわかるのですが。

このような点はありますが、この本は複数の資料を元に丁寧にまとめて、それぞれのエピソードへの著者の批評も加えた、読んで楽しめる本です。

1番に書いた3冊の本や、3番に書いた他のインタビューをご存知ない方は、はじめて知ることがたくさんあって、その面からもとても興味深くお読みになれるでしょう。



さて、以下の全部にあてはまる方はこの本を楽しめないかもしれません。

1. 写真がみたい。(1枚もありません。本の表紙にホームズと二人のワトスンが載っていますが、これも写真ではなく絵です。本の中には絵もありません。)
2. すでにどこかで読んだものは、あらためて読まなくてもいい。
3. ある特定の人(=著者)が、このシリーズの作品をどう描写しどう評価するかは読まなくていい。
4. これは著者が今回新たに関係者にインタビューして作った本だろうと思って、それを期待している。

でももしも私がこの本を手にする前にこのリストを見たら、私はこの4つに全部あてはまると思うかもしれないです。この本を手にした後では、私はこれを買ってよかったと思っています。

ただ(私にとって)残念なのは、この筆者は割合と難しい単語を使いたがるという気がします。英語の語彙が乏しいもののひがみでしょうか。この本が参考にしている、最初にあげた3冊を読んだ時よりも、見たことがない単語がはるかに多いように思います。まあ、新しい語に触れる良い機会と考えて読んでいきましょう。

まだ一部しか読んでいませんので、今回の紹介には修正や追加もあるかもしれません。その場合は後日書きます。

RM
今日はeBayに出品された写真をご紹介しましょう。(落札されていますから、数ヶ月後にはリンク先のeBayのページは削除されるでしょう。)

1枚目はジェレミーがファンと写っている写真で、いつものように肩を抱いてあげて、満面の笑みです。The Wyndham's Theatreでの写真、と書かれていますから、The Secret of Sherlock Holmesの終演後ですね。
http://www.ebay.com/itm/382017953215

携帯電話やスマートフォンからだとどう見えるかわからないのですが、コンピュータからだと左上の写真を2度クリックするとかなり大きくなります。

大きくして見るとジェレミーは小さな飾りのついたチェーンをしています。これが「ぼんやりした写真2枚」の記事の前半で触れた、ベルのチャームが複数ついたチェーンなのでしょうか。


もう一つ、今度はDavid Burkeの写真を。
http://www.ebay.com/itm/162369995931

こちらは1980年代、The National Theatreで、とのことです。左手にアタッシェケース、右手に眼鏡、そして着ているのはクリスマス・セーターのようにも見え、珍しくちょっとはにかんだ笑みに見えるのですが、どうでしょう。

RM
4月になりました。3月、4月は終わりと始まりの月ということもあるのでしょうか、こころがうごくことも多く、少しつかれているという気がします。それで今日はごく簡単に、グラナダシリーズに関する新しい本のご紹介をしましょう。内容はまた後ほど。ただいま注文中で、もう少ししたらイギリスから届くという段階なのです。本が出ましたよ、という短いご案内です。

"Granada's Greatest Detective: A Guide to the Classic Sherlock Holmes Television Series"という本で、著者はKeith Frankel、出版社はFantom Filmsというイギリスの小さな会社です。("a small media company"と彼らのFacebookに書いてありました。)

出版社のウェブサイトでのこの本の紹介ページはこちらです。昨年11月の出版でした。
http://www.fantomfilms.co.uk/books/keithfrankel_granadasgreatestdetective.htm

この本の出版のことを知った時、評判を少しきいてから購入するかどうか決めようと思いましたが、なかなかきこえてきませんでした。私がもう結構と思う本、あるいは読みたくない本は、つぎはぎしてまとめたような本、"The Man Who Became Sherlock Holmes"のように何一つ出典が記されていなくて、フィクションとノンフィクションの境界が消されている本、意図的に興味をあおるようなセンセーショナルな記述の多い本です。そうでないことが推測できるようなら注文しようと思っていました。

この本はアマゾンでも取り扱いがありますが、イギリス、日本、アメリカ、いずれのアマゾンにもまだ購入者の感想が載っていません。

でも最近Facebookのあるグループでこの本に好意的なコメントがあったので、読んでみようと思い注文しました。私はグループに入っていませんが、公開グループなので誰でも発言を読めます。4人のひとがいずれもほめています。ただ最後の方のエピソードに対して著者が批判的すぎるという感想はありましたが。
https://www.facebook.com/groups/1379897192271018/permalink/1720422831551784/

日本のアマゾンでのページはこちらです。
https://www.amazon.co.jp/dp/1781962677

私はより安い、イギリスのお店に頼みましたので少し時間がかかっています。

上にあげた出版社のウェブサイトのページには、この本には"interviews with both cast and crew [...] including Michael Cox (producer), Jeremy Brett, David Burke, Edward Hardwicke, Eric Porter, Rosalie Williams, Jenny Seagrove, Robert Hardy and many others" も含まれるとあります。Eric Porterはモリアーティ教授、Jenny Seagroveは「四つの署名」のメアリー・モースタン、Robert Hardyは「犯人は二人」のミルバートンですね。それ以外にもいろいろなひとの話がきけそうです。

RM

追記:ナツミさんち(21世紀探偵)が今年もエイプリルフール仕様(今年は「連続ネット小説 わとすんさん」)になっていました(うふふ)。
Joan Wilson(ジョーン・ウィルソン)とジェレミーの夫婦に関して、前々回の記事を書きながら思い出していたもう一つはこちらです。

Tragedy leads to a new Holmes
by Linda Hawkins
TV Times, 19 December 1987-1 January 1988

このTV Timesのバックナンバーは割合とよく見るもので、そう高くなく手に入ります。また"For Fans of Jeremy Brett" 2007年の投稿に、このTV Timesの記事の切り抜きがあります。下2枚です。
http://jeremybrett.livejournal.com/66197.html

「ジョーンがいたから自分を信じられたのです。ジョーンがいないのなら、演じる意味はなくなりました。でも彼女の死に耐えるために私にできることは、働くことだけでした。無理をして働きすぎました。

(中略)

ホームズはとても孤独な男です。それに影響されてしまって外に出る気がしなくなり、ホテルの部屋に一人こもっていました。ひどい状態になって、ほとんどボロボロでした。」

しかし入院後数週間して、回復の兆しがみえはじめた。退院してからそれほどたたずに次の撮影にのぞんだ。自ら望んだわけではない、ひどく辛い経験をしてきたわけだが、心の傷をもたらしたその経験には、結果としては良い面もあったことが少しずつわかってきた。

「ものの見方がかわりました。ベジタリアンになってからだの具合がよくなりました。思っていたよりも、自分はずっと強いのだと知りました。あの辛い時期を乗り越えたのだから、私はきっととても強いはずです。それを知って、自分を信じることができるようになりました。今はずっと楽な気持ちで生きています。

もちろん今でも妻のことを思って、今も生きていてくれたらと思います。パートナーを失うことの一番悲しい面は、何でも話して気持ちを分かち合う人がいなくなることです。でも少なくとも今私は、悲しむだけではなく前を向いていられます。ホームズの他の映像化作品から重圧を感じることも、今ではなくなりました。膨大なセリフを覚えられるか心配して寝られずにいることもなくなりました。」

'Joan was my confidence,' says Brett, 'and without her there was no reason to go on. But the only way I managed to cope with it was to work. I worked too hard and it all got too much.'

[...]

'Holmes is such an isolated man,' he says, 'and that isolation affected me. It got so that I didn't want to go out. I stayed alone in my hotel room all the time. I became very ill and the experience nearly destroyed me.'

Yet after a few weeks in hospital Brett began to recover and not long after returning home was working on another Sherlock Holmes. He had been to hell and back and it was not an experience he would have willingly undergone, yet gradually he realised that the trauma, in a strange way, had had its positive aspects.

'My outlook changed,' says Brett. 'I became a vegetarian and felt better for it. I leaned that I'm much stronger than I thought. I must be strong to have survived, and that knowledge gave me confidence. Now I'm much more relaxed.

'I still miss my wife, of course. The worst thing about not being part of a couple any more is that you've got no one to share things with, but at least now I can go forward. I no longer feel the weight of those other Sherlock Holmeses. I'm no longer up half the night worrying about learning my lines.'


あのすばらしい作品を知っていて、ジェレミー演じるホームズへの評価と、グラナダシリーズがこれからもずっと賞賛され続け、生き続けていくであろうことを知っている今の私たちからは想像がつきにくいのですが、ホームズを演じるにあたってのジェレミーの重圧と不安はとても大きかったのでしょう。あれだけの大きなプロジェクトで、多くのひとが関わり、多くのお金が費やされているシリーズでした。またホームズは多くの有名な俳優が演じてきた役でした。ホームズという孤独で複雑な男は、明るいジェレミーに暗さももたらしました。そんな中でジョーンの存在、共感と助言は大きな支えだったはずです。その支えを失った中で、仕事に没頭することで自分を持ちこたえようとして、自分の中の何かがばらばらになってしまった。そこからゆっくりと回復する中で、自分を信じられるようになっていったということでしょう。

なおベジタリアンになったと言っていますが、ここ以外では読んだことがありません。1989年のScrawlのインタビュー "The Wonderful Mystery of Sherlock Holmes" で、The Secret of Sherlock Holmesの舞台の前にステーキと言っていましたから、ずっとベジタリアンだったとは思いません。この記事の後でかわったかもしれませんし、この時点ですでにそうではなかったかもしれません。

でもそれ以外の、ものの見方が変わったとか、自分に自信が持てるようになったとか、リラックスできるようになったということはこれまでも読んだことがありますし、亡くなるときまでそうだったのでしょう。そしてそれはジョーンを亡くした辛い経験がもたらしてくれたものだと思えるようになって、それでもやはり、いつも多くのことを話して気持ちを分かち合ってきたジョーンのことを死ぬまで思い続けて恋しく思っていたことでしょう。

久しぶりに会ったひととの話の中で、あるいは自分の日々のくらしの中で、別れのこと、死のことを思ったこの半月ほどですので、ここを引用するためにあらためてこのインタビューを読み直す機会があってよかったと思いました。

RM
(3/20追記:これ、3月18日に書いたのですが、間違って3月16日の日付をつけてしまいました。ですから本文中「ところで昨日 ... 発売されました」の「昨日」は3月17日のことです。なんかこう書いていると日にちとか時とか、そういうものがとても柔らかいもののように思えて不思議になります...。)

前回の記事で、Joan Wilson(ジョーン・ウィルソン)とジェレミーの夫婦は「アメリカとイギリスで離れ離れでも、しょっちゅう電話で話していたようなので」と書きながら、二つの記事を思い出していました。今日はそのうちの一つから引用しましょう。

Sherlock Holmes In America
by Sylvia Lawler
The Morning Call, November 10, 1991
http://articles.mcall.com/1991-11-10/entertainment/2827509_1_sherlock-holmes-charlton-heston-s-holmes-baker-street-irregulars

これはアメリカツアーの時のインタビューで、今までもここから引用したことがあります。
スイスのホテルの暗い部屋で:1991年の新聞記事より
「こんにちは!」「あああああああああ!」:1991年の新聞記事より

「ホームズに腹をたてていました。私はホームズにつかまっている、ホームズが心の中まで入ってきていると感じました。そう感じたのは何よりまず、私が家から長く離れてしまったからです。撮影はロンドンではなくイギリス北部、マンチェスターで行われたので、ホテルの一部屋に閉じこもって、給料のすべてを妻との電話代に使っていました。」

ブレットの二度目の妻、故ジョーン・ウィルソンはPBSの高名なエグゼクティブ・プロデューサーだった。看板番組の"Mystery!"と"Masterpiece Theatre"の責任者で、このプログラムの方針を決め、放映するドラマを選んだ。

「妻は『きっと大丈夫よ、あなた。それだけの価値があることですもの』と言い、僕は答えました。『そうだね、でも...。』」

"I resented him. I found him getting in my hair. I just felt invaded by him. First and foremost, I was whisked away because we don't shoot in London; we shoot in the north of England in Lancashire (Manchester) and I was thrown into a hotel room and I spent all my salary talking to my wife." Brett's second wife, the late, respected executive producer Joan Wilson, was the guiding hand, taste arbiter and ultimate influence over of "Mystery!" and "Masterpiece Theatre" during the golden years of those PBS mainstays.

"She said 'Oh, darling, it will be all right. It's worth it.'

"And I'd say 'Yes but ...'"


実際に電話代にすべてのお金を費やしたかどうかはともかく、普段のちょっとした話も、そして仕事の話も、二人は電話でいろいろと話していたのでしょう。ジョーンはプロデューサーの目からも、ジェレミーの話をきいたり、助言したことでしょう。でもそれだけではなく、俳優の気持ちもわかる人だったはずです。彼女自身がかつて女優でしたから。

女優だったこともあるウィルソンは、あたたかい人柄で、たくさんの人と一緒にいるのを楽しむ性格だった。同僚たちからは、エネルギーにあふれた完璧主義者として記憶されている。

A former actress, Wilson was a warm, gregarious person, remembered by her colleagues as an energetic perfectionist.


There's No Place Like Holmes
By Rhoda Koenig
TV Guide, October 22, 1988
(「完璧主義」の記事で以前もご紹介しました。)

ジョーンは女優の経験から、becomerのジェレミーがホームズを演じることの大変さも、そしてこれを演じることの俳優・ジェレミーにとっての大きな意味も十分わかっていたでしょう。そしてプロデューサーとして、この映像化作品が名作であることもわかっていたはずです。だから、これは素晴らしい挑戦で、それだけのことはある、と励ましたのでしょう。

それに対して'Yes, but ...'と答えた、その時のジェレミーの気持ち、そしてホームズは大きな成功をおさめ、ジョーンは世を去った、その後に訪れたアメリカで、ジョーンとの会話を思い出しながらこれを口にした時のジェレミーの気持ちを想像してみます。



ところで昨日、ジェレミーが詩を読んで参加しているPurcell Consort of Voicesのアルバム、"I Love, Alas" がアマゾンのデジタルミュージックストアで発売されました。
https://www.amazon.co.jp/dp/B06XHH88FM

このアルバムについては以前こちらでご紹介しました。
詩の朗読のCD

絶版のCDが再び形をかえて手に入るようになるのは、とてもうれしいことです。それがジェレミーが関わったものであればなおさらですね。ただアルバムのタイトルが少し違います。以前は"I Love, Alas - Elizabethan Life in Music, Song and Poetry - the Elizabethan in Love"、今回は"The Tudors - I Love, Alas" です。デジタルミュージックストアに各トラックの曲名が載っていて、これは完全に以前のCDと一緒ですから、再発売にともなってタイトルを少しかえたのでしょう。

それぞれのトラックから、少しずつ試聴できます。もちろんジェレミーの朗読のトラックも聴くことができます(試聴は各トラック30秒ずつのようで、でもジェレミーの朗読は一番短いのが39秒ですから、このトラックはほとんどを楽しめます)。トラックごとでもダウンロードできるようですから、ジェレミーの詩の朗読だけの購入も可能です。ただ全体を通じて聴いた方が、このアルバムの良さはより感じられるかもしれません。

詩の朗読のCD」の記事でご紹介した絶版のCDの方も、タイミングによっては中古CDが数百円で販売されていましたから、そちらを待つのもよいかもしれません。

またもうすぐCDの形でもあらためて販売されるようです。絶版ではなく「現役」のCDも買えるようになるのですね。
https://www.amazon.co.jp/dp/B06XCGGSKN

こうしてジェレミーの朗読が古楽ファンにも知られるようになるのは、とてもうれしいことです。

RM

 RM

Author: RM
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和訳には間違いがあるかもしれません。最近は必ず英語原文を併記・またはアドレスを書いて読めるようにしていますので、どうぞそちらも参考になさってください。

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